「捨てられない性格なんです。」
そう自分で自覚するくらい、私は昔から物を手放すのが苦手でした。
買った本の帯、ゲームソフトを包むビニールのフィルム、購入時のレシート、スマホで撮った写真——。何一つ捨てられない。
そのくせ、写真を整理するわけでもないので、スマホの容量はいつもギリギリ。
いつの間にか、私の部屋はモノで溢れかえり、床が見えなくなることも珍しくありませんでした。
「もったいないから」「いつか使うかもしれないから」
そんな言い訳を繰り返しながら、私はモノを増やし続けていました。
浪費癖とコレクター気質
実家暮らしだった私は、給料を好きなように使っていました。
光熱費や家賃を支払う必要がないぶん、自由にお金を使える環境だったんです。
気がつけば、ちょっと貯金がたまるたびにバイクや車など大きな買い物をしてしまう日々。
とくにバイクにハマっていた時期は、必要以上に純正の工具を集めまくっていました。
修理に使うというより、集めること自体が目的になっていたんです。
道具箱には一度も使ったことのない工具がずらりと並び、自己満足だけがそこにありました。
漫画も同じ。1巻を買えば、すぐに「全巻揃えなきゃ」という衝動に駆られます。
読んでいない巻もあるのに、本棚を埋め尽くすことが目的になってしまう。
新刊が出れば、とりあえず買う。でも読まずに積む。いわゆる「積ん読」状態。
iPhoneも毎年買い換えていました。最新モデルが出るたびに、「これは買わなきゃ」と。
正直、機能の違いなんてほとんど感じていないのに、手に入れたことで安心していました。
そうして、箱にしまわれた旧型iPhoneたちは、ただの自己満足の象徴になっていったのです。
転機は「実家の建て替え」
そんな私の浪費生活にブレーキをかけたのは、突然の「実家の建て替え」でした。
思いがけず、人生で一番の“強制片付けイベント”が始まったのです。
家を建て替えるということは、一度すべての荷物を外に出さなければなりません。
今までは見て見ぬふりをしていた押し入れの奥、天袋、クローゼットの中……。
そこに溜まり続けていた、過去の「私」が集めたモノたちと向き合うことになりました。
正直、最初は辛かったです。
「これは思い出の品だから」「まだ使えるし」「高かったし」
そんな言葉が頭の中をグルグル回り、なかなか手が止まりませんでした。
でも、荷物を手に取るたびにある“違和感”を覚えるようになりました。
気づき:モノは朽ちていく
それは、モノが「朽ちている」ということでした。
かつて新品だったはずの漫画本は、いつの間にか黄ばんでいて、表紙にはカビが生えていました。
CDも同じ。ケースは白く濁り、ディスクは再生できないものも。
バイク用に集めた工具も、使わずに放置していたせいで、未使用なのにサビだらけ。
大切に保管していたスマホも箱ごとカビが生え、ゲームソフトも電池が液漏れを起こし、ボタンは反応しなくなっていました。
大量に集めたレシートも、印字が消えていて、何が書いてあるのかすらわからない。
私は衝撃を受けました。
あれだけ「もったいない」と思って大切に保管していたものが、時間と共に「ただのゴミ」になっていく現実に。
モノは永久に価値を保つものではない。
使わなければ、劣化する。放置すれば、カビる。
大切にしていた“つもり”が、実は一番モノに失礼なことだったのかもしれない——。
そんなことを思うようになりました。
行動:価値があるうちに手放す
この“気づき”は、私の中で大きな価値観の変化をもたらしました。
「だったら、価値があるうちに手放そう」
そう考えるようになったのです。
そこから私は、メルカリやラクマといったフリマアプリを使って、持ち物の整理を始めました。
最初は不安もありました。「売れるのかな」「面倒くさそうだな」と思っていたからです。
でも、実際に一つ手放してみると、心がすーっと軽くなるのを感じました。
「使っていないけど手元にあるだけで気になっていたもの」がなくなることで、心のノイズが減っていく。
売れたことでちょっとした収入にもなり、次第にモノを持つことへの執着が薄れていきました。
最初は、本・ゲーム・CDなどを中心に。
次第に、服や小物、家具まで、どんどん出品しました。
不思議なことに、手放せば手放すほど、「本当に必要なもの」が見えてきたのです。
ミニマリストとしての第一歩
今でも、私は「完璧なミニマリスト」ではありません。
未だに「もったいない」と思ってしまうこともありますし、衝動買いしそうになることもあります。
でも、以前の私と比べると、かなり変わったと思います。
「必要かどうか」「それは今の自分にとって本当に大切か」
そうやって一つひとつのモノと向き合う習慣がついたのは、あの建て替えと、カビだらけのコレクションたちのおかげです。
これからも私は、少しずつ身の回りを整えながら、本当に大切なモノだけと暮らしていきたいと思います。
モノを減らすことは、心を豊かにすることにもつながる——
それを知った今、私は“ミニマリスト”という生き方を、これからも自分なりに追いかけていくつもりです。
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