ついにAppleが「史上最も薄いiPhone」を世に送り出しました。その名もiPhone Air。
厚さはわずか5.6mm。まるで一枚のガラスプレートのように洗練されたデザインで、スマホというより“未来の通信デバイス”を手にしているような錯覚さえ覚えます。
しかし、その圧倒的なデザインの裏には、多くの「引き算」も隠されています。今回は、このiPhone Airを実際に手に取り、スペック・使い心地・犠牲になった機能まで、徹底的にレビューしていきます。
デザインとサイズ感 ― モデル体型のiPhone
手に持った瞬間に誰もが驚くのが、この圧倒的な薄さ。
側面はチタン素材で高級感を放ちつつ、指紋がやや目立つのが難点ですが、それも「鏡面の美しさ」を手に入れた代償と考えれば許容範囲でしょう。
画面サイズは6.5インチと、プロモデルより大きめ。大画面と薄型を両立したことで、動画やSNSの閲覧体験は格別です。重量は165gとシリーズ中では最軽量。とはいえ過去のminiシリーズ(135g前後)に比べると軽量感はやや劣ります。
ただし、薄すぎるがゆえに自立させることはほぼ不可能。机に立てかけると“ドミノ倒し”状態になるため、スタンドやケースが必須です。
スペックと性能 ― プロモデル級の頭脳
iPhone Airには最新のA19 Proチップが搭載されています。これはプロモデルと同等の処理能力を持ち、日常使いやゲーム、動画編集も余裕でこなせます。
ただし、GPUのコア数が1つ削られているため、グラフィック性能は若干控えめ。また、発熱によりパフォーマンスが抑制されるケースもあり、長時間のゲームプレイや動画撮影では注意が必要です。
それでもベンチマークのスコアはプロモデルに肉薄。普段使いでは差を感じにくいレベルでしょう。
バッテリー性能 ― 薄さの割に優秀
「薄いと電池持ちが不安…」と思う方も多いはず。しかしAirは意外にも最大27時間の動画再生に対応。
バッテリーの詰め込みに工夫が施されており、実用面では十分すぎるスタミナです。
ただし、有線充電がやや遅めで、50%まで充電するのに30分かかる仕様。急速充電を重視する人には少し物足りないかもしれません。iPhone他モデルは、20分で50%となります。
カメラ性能 ― 引き算の象徴
ここがiPhone Airの最大の試練です。
・超広角・望遠レンズは非搭載
・シネマティック撮影・ProRAW撮影は不可
つまり、日常使いには問題ないものの、作品作りや本格的な撮影を望む人には向いていません。
ただし、単眼でもポートレートモードには対応。人物以外にも動物やモノを背景ボケで撮れるのは大きな魅力です。ズームも最大8倍まで可能ですが、デジタル処理による粗さは否めません。
「SNS投稿用なら十分」「本格撮影は別のカメラで」という割り切りが求められます。
音質 ― モノラルスピーカーの復活
驚くべきは、Airがモノラルスピーカーを採用している点。
これまでのiPhoneは上下2基のスピーカーからステレオサウンドを実現していましたが、Airでは上部スピーカー1基のみ。
実際に比較してみると、音の厚みや迫力は明らかにプロモデルに劣ります。動画や音楽を端末スピーカーで楽しむ人には物足りないでしょう。
しかし、Appleとしては「AirPods Proと一緒に使ってください」というメッセージなのかもしれません。イヤホン派には大きな問題にならないでしょう。
耐久性 ― 曲がりやすさに注意
薄型化の代償として気になるのが本体の曲がりやすさ。
Appleは「50kgの圧力に耐える」と説明していますが、実際に軽い力でもたわむ感覚がありました。
特に注意すべきはお尻ポケットに入れること。座った拍子に負荷がかかれば、簡単に曲がってしまう危険性があります。ケース必須、もしくは持ち歩き方を工夫する必要がありそうです。
eSIM転送の不安定さ
今回のレビューでは、eSIM転送が一部キャリアでスムーズにいかない場面もありました。主要キャリアは概ね対応していますが、格安SIMやマイナーなプランを使っている人は注意が必要です。
「物理SIMスロット廃止」というAppleの決断が、今後さらに議論を呼びそうです。
iPhone Airは誰におすすめか?
ここまで見てきたように、iPhone Airは「引き算」によって誕生した特別な存在です。
おすすめできる人
・SNS中心で写真・動画を撮る人
・AirPodsなど外部オーディオを常用する人
・軽くて大画面のiPhoneを求める人
おすすめできない人
・スマホ単体で高音質を楽しみたい人
・ポケットに雑にスマホを入れる癖がある人
まとめ ― 美しさは時に不便を伴う
iPhone Airは、まさにAppleらしい挑戦的なモデルです。
極限まで薄さを追求しながらも、A19 Proチップや大容量バッテリーを詰め込んだ技術力には驚かされます。一方で、カメラ・音質・耐久性といった部分で割り切りが求められる「信者試し」の一台でもあります。
15万9800円という価格は「Airなのに軽くない」と感じるかもしれませんが、所有欲をこれほどまでに刺激するiPhoneは久しぶりです。
究極のデザインを取るか、機能を取るか。
iPhone Airは、あなたにその問いを突きつけてくるデバイスです。
あなたは「Airの美しさ」を選びますか? それとも「Proの万能さ」を選びますか?
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